医療法人たばた小児科
〒355-0153
埼玉県比企郡吉見町久米田616-8
0493-54-8822
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院長より病気についてのメッセージを公開しております。
PDFファイルをクリックしていただきますと院長自らタイプしました印刷用のファイルが開きます。
インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型がありますが、流行するのはA型とB型です。 A型には2つの亜型(Aソ連型とA香港型)があるので、この2つにB型を加えた3種類のウイルスが交互に、 あるいは同時に、主に冬に流行を繰り返しています。2009年から,従来のAソ連型は突然変異で生まれた新型のAソ連型にとって代わられました。
人間は,初めて出会うウイルスには必ず感染してしまいますが、 そのウイルスの記憶は一生体の中に残るため、同じウイルスには二度と感染しません。 これを終生免疫といいます。ところが、インフルエンザウイルスは常にそのかたち(表面抗原)を変化させているため、 過去の感染によって獲得した免疫が必ずしも有効であるとはいえません。そのため、インフルエンザには一生のうちに何度も反復して感染します。
A型の2亜型もB型も互いに交差免疫がないので、1シ-ズンにこれら3型の混合流行があると1シ-ズンに3回インフルエンザに感染する場合もあり得ます。
インフルエンザウイルスは低温低湿を好み、潜伏期間が1~4日と他のウイルス感染症に比して短いのが特徴です。 そのため、日本では冬に爆発的で短期間の流行がみられることが多いのですが、春や夏にも小規模な流行がみられることもあります。 タイなどの熱帯地方では、1年中インフルエンザの小規模な流行がみられています。
他の風邪に比べ、発熱のほか頭痛、全身倦怠感、筋関節痛などの全身症状がより顕著であることが特徴です。 約38~40℃の熱が2~5日ほど続き、熱が下がり始めると咳、鼻汁などが目立つようになります。 解熱してからさらに3日間は他人へ感染する可能性があるので、注意が必要です。
合併症としては、熱性けいれんや中耳炎、肺炎などがあります。 また、忘れてはならない合併症に脳炎・脳症があります。 毎年数十人以上の小児がインフルエンザで死亡していますが、その多くが脳炎・脳症によるものです。
脳症の起こるメカニズムは未だ解明されていませんが、 インフルエンザが馬鹿にしてはいけない病気であることは確かです。
咳、鼻汁など種々の症状に対しては対症療法を行います。 熱に対しては大人や年長児には解熱剤を使用することがありますが、年少児や幼児には原則として使用しません。
発熱時には体の免疫力が増強されており、ウイルスや細菌をやっつけるのに都合のよい状態になっています。 また、年齢の小さい小児ほど熱に強く、解熱剤を使って熱を下げることは意味がないだけでなく、 免疫力を低下させ病気を長引かせる原因になります。 特にインフルエンザにおいては、解熱剤の使用が脳炎・脳症の合併に関与していることが知られています。
タミフルやリレンザといった抗ウイルス剤は、発症してから48時間以内に使い始めれば約1日で解熱し始め、 発熱期間が短縮できます。タミフルを服用した小児が高いところから飛び降りたという報道が2007年になされましたが、 その後の調査で、タミフルを服用したグル-プと服用しなかったグル-プ間で、異常行動のみられる頻度に差がないことが判明しました。 異常行動のほとんどが、インフルエンザ自体による症状であると考えられています。
インフルエンザウイルスに接触しない方法や、ウイルス自体の感染力を低下させる方法を考えてみましょう。
毎年暑くなってくると皮膚疾患の代表として,みずいぼ・虫さされ・あせもなどとならんで「とびひ」が増えてきます。 通常は,怖がる必要のない皮膚の疾患です。 しかしここでも,みずいぼと同様に‘治るまでは登園禁止’などと誤った対応をしている保育園もあり, 保護者も混乱しています。
「とびひ」についても,しっかり勉強しておきましょう。
黄色ブドウ球菌(一部は溶血性連鎖球菌)が, 掻きこわしたりして傷ができた皮膚に侵入して「とびひ」になります。 6~10月頃の暑い時期に,おもに0~6歳くらいの小児に多くみられます。
暑いと皮膚には湿疹・あせもなどが増え,こどもはこれを掻きこわします。 また暑くなると,皮膚表面の黄色ブドウ球菌もどんどん増えてきます。 これが,夏場に「とびひ」が多い理由です。
アトピ-性皮膚炎などがきちんとコントロ-ルされておらず,皮膚のバリアが壊れているこどもは, 「とびひ」になりやすいといえます。
赤みを帯びた,ジュクジュクしたおできが増えてきます。 放っておくと全身に広がり,抗生物質の軟膏だけではいつまでたっても治りません。 全身に飛ぶように広がるので「とびひ」といわれます。
「とびひ」は他人にうつると誤解されていますが,厳密に言うと「とびひ」はうつりません。 「とびひ」の原因となる黄色ブドウ球菌は,常在菌といって誰の皮膚にも必ずいます。 ただ,皮膚の表面にいるだけで,悪さをしなければいいのです。
肌の触れあう機会の多いこどもたちは,風邪のウイルスと同様に, 黄色ブドウ球菌などの細菌も常にやりとりしています。 うつされた細菌が皮膚の表面にいるだけなら問題ないのですが, 皮膚を掻きこわすなどして,皮膚のバリアが壊れたところから細菌が侵入してしまうと「とびひ」になります。
だから厳密には,黄色ブドウ球菌はうつるけれど,「とびひ」自体がうつるわけではありません。 このへんが混同されています。
黄色ブドウ球菌は常在菌なのですから,「とびひ」を理由に登園を禁止する必要は全くありません。 プ-ルも禁止する必要はありません。プ-ルの塩素の働きで, プ-ルの中では細菌感染は,むしろ起きにくい可能性さえあります。 ただ,あまりに広範囲で目立つ「とびひ」の場合は, あくまでも見た目の問題でしかないのですが,いやがられてしまうことがあるので, 当院でも‘プ-ルは控えた方がいいかもしれませんね’とお話することがあります。
入浴は,皮膚を清潔に保つという点から,必ず毎日行ってください。 お風呂で「とびひ」がうつることもありません。 家族みんなで入っても大丈夫です。
黄色ブドウ球菌に効き目のある抗生物質を内服します。 軟膏だけでは,多くの「とびひ」は1ヶ月たっても治りません。
最近はMRSAといって,ほとんどの抗生物質が効かない黄色ブドウ球菌が増えています。 そのため,数種類の,MRSAにも効く可能性のある抗生物質を,うまく選んで使用しているのが現状です。
MRSAは,いったん悪さを始めると,とても強い細菌です。 うまく抗生物質が効いてよくなりはじめても,中途半端なところで治療を中止してしまうと, すぐにぶり返して,また最初から治療をやり直さなくてはなりません。
その抗生物質がしっかり効いているかどうかの確認と,いつまで薬を飲むべきかの決定のために, 「とびひ」の場合は再受診をお願いしますが,ご理解ください。 うまく抗生物質が効けば,およそ1週間以内に治ります。
約70年前にペニシリンが実用化されてから, それまで苦しめられていた多くの細菌感染症から,世界中の多くの人々が救われるようになりました。
しかし細菌たちも,そのまま自分たちが絶滅するのを黙ってみているわけではありませんでした。 抗生物質を使い続けているうちに,細菌の染色体に突然変異が起こり, 抗生物質が効きにくい,または全く効かない細菌(耐性菌)が,数十年前から増えているのです。 MRSAもその1つです。
『耐性菌を減らすために最も有効なのは,抗生物質をできるだけ使わないこと』が, 世界中の研究で判明しています。実際に,抗生物質の使用を制限し始めた欧米諸国では, MRSAをはじめとする耐性菌は激減しています。
日本で耐性菌が問題になっているのは, 必要のない抗生物質を何の疑問も持たずに使っている医療機関が,まだまだ多いからです。
たとえば,風邪の原因は細菌ではなくウイルスです。ウイルスには抗生物質は無効です。 ただ‘高い熱が出ているから’という理由だけで抗生物質を処方するのは,誤った医療です。 特に,強い抗生物質を必ず処方する医療機関をかかりつけにしているこどもたちは, 体の中や外に多くの耐性菌をもっています。 このようなこどもたちは「とびひ」や急性中耳炎などの細菌感染時に,抗生物質が全く効かない危険性がでてきます。
問題は,そういったこどもたちから耐性菌をうつされる可能性があることです。 抗生物質ばかり出す医療機関にかかるのはその人の自由ですから, その人だけが痛い目に遭うのは‘自業自得’です。 しかし,良心的な医療機関をかかりつけにしているのに耐性菌をうつされるのは,非常に腹立たしいことです。
患者さんも,ただの風邪には抗生物質は無効であるどころか, 耐性菌のことを考えれば有害である,という意識をもっとしっかり持っていただきたいと思います。 当院をかかりつけにしている方は,心配する必要はありませんが。
いつもプールの季節になると,みずいぼの問題が出てきます。 みずいぼのあるこどもは,医療機関で取ってこないとプールに入れないという保育園や幼稚園があるからです。
しかし,プールを禁止しなくてはならない医学的根拠はあるのでしょうか? こどもたちの楽しみを奪ってまで,警戒せねばならない病気なのでしょうか? <みずいぼ>について,きちんと勉強してみましょう。
軟属腫ウイルスが皮膚に感染するためにおこります。 プールで感染すると誤解されていますが,むしろ紫外線とプールの塩素の効果で感染しにくいとも考えられています。 集団生活では肌と肌が触れあう機会は非常に多く,プールを禁止してもみずいぼは減らないことが,大規模な調査により判明しています。
皮膚に数個~数十個の盛り上がった皮疹がみられます。 通常はほとんど自覚症状はありませんが,痒みを訴えることがあります。
個人差もありますが,だいたい1年前後で自然に消えてしまいます。 これはみずいぼのウイルスに対する抗体が体の中で作られて,ウイルスをやっつけた結果です。 この免疫は一生残りますので,一度治ってしまえば二度とみずいぼができることはありません。
確実な治療法はありません。
一般的に行われているのは,みずいぼ用のピンセットでみずいぼをむしり取る方法です。しかしこの方法は非常に痛く,こどもにとっては拷問に近いものです。痛みを軽くするために麻酔テ-プなどを貼ってから取る方法も行われていますが,全く痛みがなくなるわけでもなく,一度に数個取るのが限界のため,取っているそばからどんどんみずいぼが増えてしまい,医療機関に半年以上も通院し続けているという冗談のような例もあります(!)。この方法は,こどもにとっては苦痛以外の何ものでもなく病院嫌いになる原因であり,保護者にとっても時間と医療費の無駄遣いです。こどもの医療費が無料化された市町村が増えましたが,そこには税金が使われていることを忘れてはなりません。
麻酔テ-プでショックを起こす可能性があることも忘れてはいけません。
ほかにも硝酸銀で焼いたり,いろいろな薬品を塗ったり,漢方薬なども試みられていますが,確実な方法はありません。
当院でも以前はみずいぼを取っていました。ただし痛いだけの原始的なみずいぼ用のピンセットは使わず,非常に痛みの少ない特殊なピンセットを使用します。今でも,顔などにできてしまい,気になるのでどうしても取ってほしいと言われた場合には,これを使って取ることがあります。痛みが少ないため,麻酔をしなくてもまとめてたくさん取れるので,大体1回の受診ですみます。
ただし,基本はみずいぼは無理に取ったりせず,自然に自分の免疫力で治るのを待つことです。取っても自分の力で治ったわけではないので,またできてしまうことも多いのです。特に困る症状がなければ,放置しておきましょう。
みずいぼが赤くなって痒みを帯びたり,掻きこわしたところから細菌が侵入して化膿した場合などには,適切な治療が必要になります。
みずいぼは良性の皮膚疾患です。 特に皮膚科医には昔ながらの方法でみずいぼを取りたがる方がまだ多いようですが, 小児科専門医の大多数は,みずいぼは自然に治癒(消失)するのを待つという姿勢でいます。 日本小児科学会も,積極的に治療する必要のない疾患であると,公式コメントを出しています。
1999年に改正された学校保健法にも,みずいぼを理由にプールを禁止する必要はないと明記されています。 厚生労働省保育科は,保育園・幼稚園での対応は学校保健法に準じて行うこと, こどもや父兄にかかるストレスを考慮すれば,プールの禁止は行き過ぎであると明言しています。
いまは情報がすぐ手に入る時代です。保育園・幼稚園の医学的にも, 法律的にも根拠のない,みずいぼに対する冷たい対応に対し,不満を持つ親が増えています。 現状のままだと,園の評判が落ちることも危惧されます。
保護者の中には,みずいぼを園でうつされたと文句を言う方もいるのでしょう。 でもその方のこどもも,ほかのお友達にみずいぼや風邪をうつしているのです。 自分のこどもだけが犠牲者と思いこんでいる困った親です。 先生方は,そういう一部の親に対して神経質になりすぎて, みずいぼは取らなくてはいけないものと思いこんでしまっておられるのではないでしょうか。 でもこのプリントの内容をご理解いただければ,そのような保護者にも適切に対応していただけるものと思います。
集団生活は,ある意味では病気のうつし合いの場です。 病気をもらったりあげたりして免疫をつけることは,丈夫な体をつくるために必要なことです。
人間は初めてのウイルスには必ず感染してしまいます。 でも風邪などの場合は,大体1週間で抗体ができてウイルスをやっつけて風邪がなおります。 一度かかったウイルスには二度とかかりません。みずいぼも同じです。 風邪に比べるとなおるのに時間がかかりますが,自分の力でなおってしまえば,二度とみずいぼはできません。
先生方のご理解と,正しい知識の普及にぜひご協力をお願いいたします。
こどもはよく熱をだします。熱の原因として最も多いのは急性咽頭炎(風邪)ですが,他にもいろいろな原因があります。
ここでは,熱が出る理由と,熱が出たときの対処法を中心に,発熱についてご説明します。
ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入すると,さまざまな免疫反応が起こります。その結果,プロスタグランディンE2 という物質が産生され,体温を上昇させます。体温が上昇すると生体の免疫系は活性化され,防御反応が高まります。
つまり熱が出ている方が,体がウイルスや細菌などの病原体をやっつけやすい,免疫学的に有利な状況にあるのです!
体温は,朝が最も低く,夕方から夜にかけて上がってきます。朝と夕方では,平熱にも差があることを覚えておきましょう。
年齢の低いこどもほど,眠かったり,満腹だったり,泣いたり暴れたりで体温は上がります。さらに部屋や外気の温度が高いと,小さなこどもほど影響を受けて体温は上がります。
平熱は次のように定義するとよいでしょう。いつも使う体温計で,健康であると思われるときの安静時の体温を,時刻・計測部位を一定にして2~3回測定し,それをその人の‘平熱’とするのです。
のちに同じように計測した体温が‘平熱’より約1℃以上高ければ,熱と考えてよいでしょう。
内臓など体の内部の温度が計測できれば理想的ですが困難なため,実際には体の外側の温度が計測されます。計測部位としては腋下(わきの下),口腔内,直腸が一般的ですが,日本では習慣的に腋下温の測定が行われています。
体温計も水銀計はほとんど見かけなくなりました。手軽に扱え計測時間も短い電子体温計が主流です。ただ,確かに電子体温計は便利なのですが予測式であるため,計測時間が短い電子体温計ほど,不正確な値が表示される可能性があります。正常な体温のこどもに‘微熱さわぎ’や‘低体温さわぎ’を起こす一因となっています。
電子体温計で正確な体温を測るコツは,ピピッという電子音が鳴っても数分間そのままわきの下にはさみ続けることです。かなり正確な値に近づきます。
そこまでは忙しくて無理という方は,電子体温計には多少の誤差があるのだということを承知しておいて,計測値を過信しないことです。顔色,食欲,元気さなどから総合的に,熱がありそうか判断してください。

熱の上がりはじめは寒気を伴い,こどもの機嫌も悪くなります。寒がって震えているようなら,一時的に体や手足を暖めてもよいでしょう。しかし,熱が上がりきった時点からは,熱を放散させる必要があります。
暑くない部屋で薄着にして,水分の補給を心がけましょう。そして背中,腋下,そけい部(大腿のつけ根)などをゆっくりと冷やします。具体的には,アイスノンや氷まくらをタオルでくるんだものを背負わせます。小さな氷のうを作り,両肩からぶら下げて腋下を冷やすのもよい方法です。また,スポンジング法といって,30℃程度のぬるま湯でゆるくしぼった手ぬぐいで体の腹面と背面を交互に10~20分間くり返して拭き,熱を放散させる方法も有効です。
これらの方法をうまく使うと,体温はゆっくりと低下してきます。手はかかりますが,最も安全な解熱方法です。
大人になるほど,人間は熱に弱くなります。37℃くらいでも,大人は頭痛・関節痛・だるさなどで辛く,夜も眠れなくなるため,短時間でも楽になって睡眠をとっていただくという目的で,解熱剤を処方する場合が多くなります。
一方,こどもは熱にとても強く,小さなこどもほど解熱剤は不要です。39℃台位なら,笑い,普通に遊び,しっかり水分が摂れる場合がしばしばです。元気の残っているこどもに,免疫力を低下させる解熱剤をわざわざ使う必要はありません。病気が治るのを遅らせるだけです。
当院では最近8年間で,6歳以下のお子さんに解熱剤を処方したことはありません。 家族の皆さんも熱についてよく理解してくださっているので,助かっています。 大きくなってしばらくぶりに受診したような場合でも,‘そろそろ熱が辛くなる年齢ですから解熱剤を出しましょうか?’とお聞きすると, ‘今まで使ったことがないし,なくても大丈夫です。’という方が多く,たいしたものだなあと私の方が感心させられています。

熱性けいれんは1~3歳を中心(ほとんどが6歳以下の小児)にみられる,発熱が誘因で起こる全身性のけいれんです。
解熱剤は一見便利なものに思われますが,解熱剤で体温が下がると免疫力も低下するため,解熱剤を使用した分だけ病気の治りが遅れます。また,数時間で解熱剤の効果がなくなると体温は再び急激に上昇します。
熱性けいれんを起こす場合,熱の上がり始めが最も危険性が高いため,解熱剤の使用は熱性けいれんを引き起こす1つの要因となる可能性があり,年齢の小さなこどもほど,解熱剤の使用には慎重であるべきです。
解熱剤を積極的に使用しても熱性けいれんは減らないことが,研究により判明しています。むしろ増える危険性があります。
熱性けいれんの予防には,ディアゼパム(ダイアップ座薬・セルシンなど)が有効です。熱性けいれんを起こしやすい小児が発熱した場合,あわてて解熱剤を使って体温を下げるのではなく,まず早めにけいれん予防薬を使用し,その上で必要に応じ,先に述べたような熱を放散させる方法で解熱を計るべきです。

熱は朝から午前中は下がり,午後から夕方,夜にかけて上がる傾向にあります。したがって熱は夜出ることが多いのですが,こどもが夜間に高熱を出すと,ほとんどの親は心配します。あわてて救急病院を受診したくなる気持ちもわかります。
しかし覚えておいて欲しいのは,熱だけでは救急病院を受診する必要はない(受診してはいけない)ということです。
熱は,体に何らかの異常が起こっているという大切なサインです。しかし今まで述べてきたように,熱は体の免疫力を上げてウイルスや細菌をやっつけるための防御機構でもあります。
わざわざ免疫力を落とす解熱剤をもらうために夜中にあわてて救急病院を受診するのは,全く無意味です。
最近,小児科医が足りないと報道されていますが,小児科医の激務が大きな原因の1つです。特に,救急外来を受診する必要のない患者の受診があまりにも多く,勤務小児科医をいたずらに疲労させています。
夜中に本当にあわてなくてはいけないのは,①意識状態が明らかに低下している。 外からの刺激に反応しない。 ②けいれんが10~20分以上止まらない。③嘔吐し続けぐったりしている。 ④呼吸困難を起こしている場合などです。
たとえ41℃の熱があっても,意識がはっきりしていて水分が少しずつ摂れていれば,夜中にあわてて救急病院に行く必要はありません。翌日にかかりつけ医を受診してください。
熱の原因として多いのは急性咽頭炎ですが,時々溶連菌感染症や尿路感染症,川崎病など絶対に見逃してはいけない疾患もあります。いったん昼間熱が下がっても,夜にまた上がることも多いので, 夜中にあわてる必要はありませんが,翌日解熱していても必ず一度は受診するようにしてください。
その方がお互いに安心です。
一般に,体温が41.7℃を超えなければ発熱による脳あるいは他の器官への障害はないとされています。通常はここまで体温が上昇することはめったになく,40℃台なら全く心配ありません。
熱の上がり始めで寒がっている場合は一時的に体を温めてもよいですが,熱が上がりきったら今度は熱を放散させる必要があります。ここで周囲から熱を加えることは,さらに体温を上昇させ全身状態を悪化させる危険性があります。ぜひそのようなことは慎んでください。
以前からお話ししているように,風邪をひくのは人間,特にこどもにとっては宿命です。風邪をひかせてはいけないと考えず,風邪をひいても悪化させなければよいと考えるべきです。
風邪のウイルスは約200種類あり,初めて出会うウイルスには人間は必ず感染することになっているのですから,生後数年しかたっていないこどもたちは,しょっちゅう風邪をひいて鼻水を垂らしていると言っても過言ではありません。鼻水や咳を理由に入浴が禁止されてしまうと,こどもたちは風呂に入れなくなってしまいます。
したがって,鼻水や咳,発熱がみられていても,元気が残っていれば,原則として入浴させるべきです。昔と違い,現代の風呂はとても清潔で気密性も高いので,湯冷めをして風邪が悪化する心配もまずありません。
また,特に冬は皮膚が乾燥して,アトピ-性皮膚炎の小児などはただでさえ皮膚症状が悪化しやすい傾向にあります。ここで何日も入浴できないとなると,皮膚に存在し,アトピ-性皮膚炎を悪化させる原因の1つである黄色ブドウ球菌が増殖し,皮膚炎はさらに悪化します。皮膚の清潔を保ち,皮膚に水分を供給するという意味においても,入浴は非常に重要です。
以上の理由から,風邪をひいていても本当に状態の悪いとき以外は,仮に熱が40℃以上あっても,入浴は積極的に考えるべきです。ただし,短時間にさっと行ってください。出た後にすぐ乾かせれば,洗髪もかまいません。
熱射病や甲状腺機能亢進症などの代謝異常に基づく発熱には解熱剤は無効です。 熱射病の場合はすみやかに体を冷やす,輸液を行うなどの処置が必要です。
3ヶ月未満の赤ちゃんの発熱は,要注意です。
風邪かなと思って油断していると,髄膜炎や肺炎,敗血症などを合併してあっという間に全身状態が悪化し,不幸な転帰をとることがあります。
特に,発熱があって①哺乳力が明らかに悪くぐったりしている,②嘔吐が続く,③顔や体全体の色が悪い,などの症状が見られたら,急いで小児科専門医を受診してください。
①~③のような症状がなくても,3ヶ月未満の乳児に発熱がみられた場合は,躊躇することなく小児科専門医を受診してください。
