11歳以下の子どもの新型コロナウイルスワクチン接種に反対します
2022/01/27
昨年7月にエッセイを書いてから6ヶ月が過ぎました。この半年間で新型コロナウイルスの世界的流行はδ(デルタ)株,そしてο(オミクロン)株へと推移してきました。
1月26日には全国の感染者数が初めて7万人台となりました。感染者の急激な増加に報道は過熱気味です。しかし,患者数が多い割には,重症者数・死亡者数ともに増加していません。δ株の流行時とは明らかに様子が違っています。
以前も書いたように,ウイルスは感染力が強くなる一方で病原性(毒性)は弱くなる方向に進化します。2年近くかかりましたが,新型コロナウイルスも今回のο株をもって,普通の風邪のウイルスにかなり近づいたと思います。
昨年12月に,ドイツの臨床流行病学者カール・ラウターバッハ教授が「ο株が新型コロナウイルスパンデミックの終息を繰り上げる『クリスマスプレゼント』になるかもしれない」と述べていましたが,現実のものとなってきたのではないでしょうか。
今回,私が筆を取ったのは,1月21日に11歳以下への新型コロナワクチン接種が正式承認されたことで,子どもを持つ多くの保護者がどうしたらいいかわからなくなっているのではないかと考えたからです。
結論から申し上げますと,私は
『11歳以下の子どもたちへのワクチン接種は断固として反対』
です。小児科医としての見解を以下に示します。
本来コロナウイルス属は若い人ほど感染し難く,感染したとしても軽症というのが特徴です。コロナウイルスが細胞の中に侵入して増殖するためには細胞表面にあるACE2という突起に付着する必要があります。ところが小さな子どもほど,細胞表面のこの突起が極端に少ないため,ウイルスは細胞内に侵入できず,結果として感染が成立しないのです。
コロナウイルスは大人には感染します。周囲の大人が感染すればウイルスをまき散らすので,近くにいる子どもたちの喉や鼻の粘膜にはウイルスが付着します。PCR検査はほんの僅かなウイルスでも検出するので,家族や園の先生などが感染すれば,子どもたちのPCR検査は陽性となります。
しかし,子どもたちは先に述べた理由により感染し難いため,PCR検査は陽性だが感染はしていないというギャップが生じます。小児科医の多くは子どもが感染しにくいことを知っていて,PCR検査や抗原検査は意味がないことを理解しているのですが,小児科以外の医師で,この辺のことがわかっている人は少ないようです。PCR検査が陽性というだけで,「子どもの感染が増えている」とテレビで平気で言ってしまっています。
私が調べた範囲では,δ株までに限って言うとおおよそ中学生以下の子どもたちへの感染は多くありません。小学生以下では,ほぼゼロに近いと言えます。
今は,最も風邪のウイルスが活躍する冬です。幼稚園・保育園の園児は皆風邪をひいているといっても過言ではありません。集団生活の中にいると,周囲の子どもたちから次々と風邪をもらいます。人は初めてのウイルスには必ず感染します。ただ,一度かかった風邪には原則として二度と感染しません。6歳くらいまでは頻繁に風邪をひきますが,経験を積んでその後風邪をひかない身体になっていくのです。風邪をひくことは,子どもたちの人生においてとても大切な仕事なのです。
周囲にコロナに感染している大人がいて子どもたちにウイルスをまき散らしているような状況では,たまたま風邪をひいて症状がある子どもにPCR検査を行えば,陽性になることも多いでしょう。症状は他の風邪によるものなのにコロナの症状と勘違いして,「子どもでもコロナに感染するのだ。マスク・手洗い・黙食・休園が必要だ。」という誤った発言・対応が出てきてしまうのです。
子どもの頃からたくさん風邪をひいたおかげで風邪にかかりにくくなった大人が発熱し,PCR検査で陽性が出れば,コロナに感染している可能性が高いと言えるでしょう。しかし,まだまだ多くの風邪にかかる宿命にある子どもが発熱し,たとえPCR検査が陽性になっても,コロナに感染したとは断言しにくいのです。
PCR検査の意味もわかっていない医師たちがテレビに出て,「子どももたくさんコロナに感染している」と平然と誤った情報を流しています。非常に嘆かわしいことです。
その結果,1月24日の時点で全国327カ所の保育園やこども園が全面休園しています。2年前に安倍前総理大臣の独断で行われた3ヶ月間の休園・休校は無意味であり,二度と繰り返してはならないと言っていた矢先の今回の休園です。
これにより多くの働く親が仕事を休まねばならず,医療・教育・福祉をはじめとする様々な現場に大きな支障を来しています。
コロナウイルスの特性を考えれば,保育園児・幼稚園児がコロナに感染する可能性は著しく低いのです。もし万が一感染したとしても重症化する可能性も非常に低く,本人たちにとっても周囲の子どもや大人たちにとっても,何の影響もないと言ってもいいと思います。
そんな中,1月21日に11歳への新型コロナワクチン接種が正式承認されました。本気なのか?と私は耳を疑いました。
一体この決定を下しているのは誰なのでしょうか?
現場の小児科医をはじめとする多くの医師たちの声を全く無視した形の今回の国の対応に,大きな怒りを感じずにはいられません。
子どもたちが感染する可能性が著しく低いウイルス。万が一感染したとしても無症状や軽症にとどまり,重症化する可能性が限りなくゼロに近い,子どもたちにとっては何でもないただの風邪のウイルス。
そんなウイルスにワクチンは必要でしょうか?
若い人ほど強く出る可能性の高い副反応におびえながら,子どもたちに接種する必要性がどこにあるというのでしょうか?
お願いします。良識のある人たち,私と一緒に大きな声を上げてください。
子どもたちへのコロナワクチン接種は意味がありません。絶対に接種するべきではありません。
早く新型コロナの2類感染症指定が外され,子どもたちへの接種が中止されるよう祈っています。
まだまだお伝えしたいことはたくさんありますが,今回は11歳以下の子どもたちへのコロナワクチン接種に反対という意見に焦点を当ててお話させていただきました。
情報が少ないことへの不安,マスコミの偏った報道に知らず知らずのうちに精神的にやられてしまっている方も多いのではないでしょうか。何を信じたらいいか,わからなくなっている方も少なくないと思います。
私の意見は,ニュースでコメントをするような医師のものとは異なると思います。それは,これを読んでくださっている皆さんをはじめとした国民の健康を第一に考えているからです。皆さんが新型コロナウイルス感染症と共存していく上で,私の意見が一助となれば幸いです。
今後も意見投稿をしていこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
12~15歳の小児への新型コロナワクチン接種について
2021/07/01
今日から7月,2021年も後半です。オリンピックも賛否が交錯する中,1年遅れで行われそうですね。ここまで来てしまったのなら,せめて何事もなく無事に終了するよう,一国民として祈っています。
この半年間,相変わらず連日報道のトップを独占し続けたのは,やはり新型コロナウイルス関連のニュ-スでした。変異株の話題も過熱気味ですが,1月のエッセイに書いた通りウイルスの変異は常に起こっているので,私はあまり気にはなりません。そのうち新種の日本株(ε株?)が登場し,オリンピックと併せて話題になるかもしれません。
さて,何よりこの半年間のコロナ関連で最も注目された大きな変化といえば,新型コロナワクチンが承認され接種が開始されたことでしょう。
1.RNAワクチンとその有効性
現在日本では,ファイザ-社が開発したRNAワクチンが主に接種されています。大規模接種会場では,モデルナ社のRNAワクチンも使用され始めました。
ワクチンの目的は,ウイルスを攻撃する武器である中和抗体を体内で製造させることです。インフルエンザワクチンに代表される従来のワクチンは,ウイルスを攻撃する中和抗体を体内で作らせるために必要な抗原(ウイルス表面のスパイクタンパク)を体外から注入します。
今回使用されているRNAワクチンは,新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子情報を利用したワクチンで,体内に直接メッセンジャーRNAを注入し,細胞内でスパイクタンパク質を作らせ,そのスパイクタンパク質に対する中和抗体を作らせるものです。
何しろ人類にとっては新しいワクチンですから,副作用もはっきりとわかっていないわけです。特に中長期的な副作用は今後の課題であり,いまだに不安を抱えている方も少なくないかもしれません。私も個人的には,まず医療関係者から接種をということもあり,実験台にされるのかという反発は内心ありました。
しかし,その後のワクチンの進捗状況を見ていると,少なくとも短期的には重篤な副反応は当初言われていたよりも少ないようです。発熱,局所の疼痛,倦怠感,頭痛などの軽い副反応は,比較的若い世代に,1回目よりは2回目に多くみられています。
何よりも,新型コロナウイルスに対するRNAワクチンは正直なところ,これまでのワクチンの歴史から見ると驚くほど有効率が高く,ファイザー社のRNAワクチンで95%、モデルナ社のRNAワクチンで94.1%の有効率(発症予防効果)と報告されています。
インフルエンザに対する不活化ワクチンの有効率は40~50%程度とされているので,出来の良いワクチンであることが分かります。
実際,高齢者へのワクチン接種が進んでいる国や地域では,新規感染高齢者数は有意に減少してきています。
2.ワクチン接種が推奨されるべき人々とは
まず,今回の新型コロナの世界的流行で最も大きな問題は何でしょうか? 一言でいえば,一部の人々が重症化し,死亡するということです。
さらに言及すれば,死亡しているのはほとんどが70歳以上で,高度の動脈硬化性の基礎疾患をもった高齢者です。視点を変えてみると,基礎疾患のない若い世代ほど感染しても重症化し難いということがわかります。
ちょうど半年前に書いたエッセイの中で,20歳以下の死亡は0名と述べましたが,あれから半年たった現時点でも,我が国における20歳以下の死亡者数は0のままです。
20歳代の死亡は全国で8名,30歳代では27名,40歳代では103名でやっとここで全人口死亡者数の0.1%となります。若い世代の死亡者数も少しずつ増えてきましたが割合としては非常に少なく,28歳で死亡した元力士に代表されるように糖尿病などの基礎疾患があり高度の動脈硬化を伴った人たちが,重症化ないしは死亡しているようです。
従って,ワクチンを接種すべき対象はまず,高齢者で動脈硬化性の基礎疾患を有する者だということは容易に理解できます。続いてそれよりも若い世代で基礎疾患を有する者という順番でしょうか。
高齢者の重症化や死亡が防げるようになれば,若い世代が感染しても現在のように騒がれなくなるでしょう。若い人ほど重症化しないので,感染しても入院も不要となり医療現場の混乱も減り,インフルエンザと同じような扱いになっていくものと思われます。
3.12~15歳の子どもたちに新型コロナワクチンは必要なのか
当初ファイザ-社のワクチンの接種適応年齢は16歳以上でした。それが突然,12歳以上の小児に接種適応年齢が拡大されました。国もこれに追従して,12歳以上の子どもたちにもワクチン接種を行うという方向に方針転換しようとしています。
でも,12~15歳の小児にワクチン接種は本当に必要なのでしょうか?
厚労省の新型コロナウイルス感染症の国内発生動向では,6月23日時点でPCR検査陽性者数の累計は781534名,10歳代で58545名,10歳未満で26361名です。20歳未満でもPCR検査陽性者は一定数報告されています。
しかし,1月のエッセイにも書いたように『PCR検査で陽性=新型コロナに感染』ではないのです。その後も私なりに情報を集めていますが,間違いなくコロナに感染した(発症し,周囲にも感染させた)という者は,15歳以下の小児では今のところ見当たりません。
埼玉医科大学総合医療センタ-のPICU(小児の集中治療室)に勤務する小児科医から話を聞くと,「15歳以下の小児は常時数名県内の病院に入院しているが,家族が感染して入院し,子どもはPCR検査では陽性だが発症はしていない。しかし,家に一人でおいておくわけにはいかないので,社会的な入院です」とのことです。さらに,「有症状であれば,うちの病院かさいたま市の県立小児医療センタ-に入院になるのだが,今までそのような小児は1人もいません」と言っています。
毛呂山町にある埼玉医科大学病院小児科に勤務する医師にも聞いてみましたが「15歳以下でコロナを発症して入院した患者はいない」とのことでした。
若い人ほど,ワクチンの副反応がみられやすく,症状も強く出ます。ファイザ-のデ-タでも,12~15歳での接種による副反応は,若い世代の中でも最も顕著です。
以上のような事実から考えれば,新型コロナに感染する可能性が非常に低い12~15歳の小児への新型コロナワクチン接種は,無意味であると思われます。無意味どころか,副反応の確率と症状の強さを考慮すれば,むしろ有害であると言えます。ワクチン接種は避けるべきだと私は考えます。
モデルナのワクチンの接種適応年齢は18歳以上です。個人的には高校生のワクチン接種にも懐疑的なので,このくらいで良いのかなと思っています。ファイザ-に対抗して, 今後モデルナも接種適応年齢を下げてくるかもしれませんが。
ワクチンをさらに販売して儲けようというワクチン会社の策略の片棒を担ぐ必要はありません。国は,12~15歳の小児に新型コロナワクチンを接種して本当によいのか,もっと慎重に検討するべきです。
改めて意見を述べたいと思いますが,2013年に小学校6年生から高校1年生を対象に始まった子宮頸がんワクチンは,僅か2カ月で「勧奨を差し控える」という異例の措置がとられ,今もその状況が続いています。その結果,70%以上あったワクチンの接種率は1%程度にまで激減しました。接種を促す通知が来ないので,自分が定期接種の対象であることやワクチンの存在すら知らない人も増えています。
このような対応は世界でも日本だけです。世界100カ国以上で評価され接種されている,癌を予防できる唯一のワクチンです。12歳以上の小児に接種するのであれば,新型コロナワクチンではなく,子宮頸がんワクチンの接種を再開する方が,比較にならないくらい現実的で有意義なのではないでしょうか。
もう一度言います。
12歳から15歳の小児への新型コロナワクチンの接種には,私は強く反対します。
新型コロナについて 2021
2021/01/09
明けましておめでとうございます。
皆様,健康でよい年を迎えられたことと思います。
昨年は,年が明けて間もなく新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し,多くの人々の生活が一変した年でした。連日過剰なコロナの報道にあふれ,多くの国民がコロナを必要以上に恐れ心を病み,モチベ-ションの低下した1年でした。
年末から感染者数が連日最高値を更新し,マスコミは相変わらずコロナのことばかり報道し,国民の恐怖心を煽っています。このままでは経済的にも精神的にも我々の生活は徐々に追い詰められ,希望を失っていく人々が増え続けるでしょう。
そろそろこの辺で,新型コロナに対する考え方と対応を変える必要があります。
4月の記事以来,文書を書くことを怠ってきましたが,このままでは日本は,世界はどうなってしまうのだろうという危機感を強く感じているため,再び発信します。
1.過剰な内容で国民の心を煽るばかりのマスコミの報道
さて,皆さんは新型コロナウイルス感染症,改めてどんな疾患だと考えていますか?
昨年出現し始めたころと比べて,大したことはないウイルスだとお思いですか?それとも,とても恐ろしいウイルスだと感じていますか?
マスコミやインタ-ネットの情報が全て正しく公平な内容なら何も問題はないのですが,非常に偏った内容の報道が多いように思われます。
まず連日感染者数や重症者数,死亡者数が報道されていますが,詳細についてはほとんど報告されません。何歳でどんな基礎疾患を持っている患者が重症化し,死亡しているのか,若い世代にも重症者が多いのかなど,詳細な内容が報道されることはまずありません。
年末から,‘イギリスでウイルスの変異種が出た’と,こぞって報道されています。これは簡単に言えばウイルスの構造に変異が起こり,より感染しやすくなった可能性があるということなのですが, ‘変異が起こった’ などと言われると多くの人は ‘より強い怖いウイルスに変身した’ と思い込んでしまうのではないでしょうか。中途半端な報道は,市民をますますウイルスの恐怖の渦中に落とし込みます。
ウイルスの変異は常にほかのウイルスでも起こっており(例えばインフルエンザウイルスは常に表面の形を変えており,何度でも感染する可能性がある),珍しいことではありません。
感染力が強いことと病原性(毒性)は分けて考えないといけません。例えば,ノロウイルスは感染性が非常に強いですが,病原性は低くほとんど重症化しません。感染力は強く,かつ宿主(人間)を殺さない程度の病原性というのがウイルスにとって自分たちが生き延びていくのに都合のいい状態です。したがって通常は,ウイルスは弱毒化していきます。
よく聞いてみれば,今回の報道でも新型コロナウイルスが強毒化したという報道はなされていませんし,その根拠も今のところありません。しかし ‘変異が起こった’ という言葉だけで,多くの市民は ‘強毒化した’ と誤解してしまうのです。
後でもう一度述べますが,若い世代ほど新型コロナウイルスには感染し難く,感染しても重症化し難いことがわかっています。20歳以下の健常者で今までに死亡した人は日本では0人,20歳代では1人です。この1人も,糖尿病があり動脈硬化が進行していたと思われる基礎疾患のある28歳の力士です。
こういったことはきちんと報告されずに,今日は全国で何人死亡したとか,こんなに怖い後遺症があるといったネガティブな報道ばかりなされています。
これでは,新型コロナは本当に恐ろしいウイルスなのだと,一般市民は潜在的に刷り込まれてしまいます。
最近は全国的に感染者数が最高値を更新し,それに伴って死亡者数も増加しています。ニュ-スでは連日,「今日は50人(も)の方が死亡しました」と報道します。
しかし,日本全国では毎日約4千人の人間が死亡しているのです。一部には事故や自殺も含まれますが,ほとんどが寿命を全うしたお年寄りです。毎日の死亡者数を考えれば,この報道の仕方には酷い印象操作がなされていると思います。
また,癌や動脈硬化などの基礎疾患があってそれが直接の死因と思われる場合でも,たまたま新型コロナウイルスに感染していることがわかると「新型コロナで死亡」とカウントされてしまいます。
4月のエッセイにも書きましたが,新型コロナを終息させることはまず無理でしょう。コロナウイルスはインフルエンザと同様,寒くて乾燥した環境を好みますからこれからさらに感染者は増加するでしょう。ただ,ゆっくりと感染が拡大してくれれば,大きな混乱は起こらずにすむはずです。
幸い日本人は暑い夏でも屋外を歩く時でも,不要と思えるマスクを着用するくらい真面目ですから,欧米と比較して,感染者数も死亡者数も今のところ百分の一程度で推移しています。ほとんどの人は軽症ですむので,一部の重症化する可能性のある人などへうまく対応ができれば,何が何でも感染してはいけないと考える必要はないのです。新しいウイルスなので,いずれは世界中のほとんどの人が感染する運命にあるのです。「感染しないようにする」から,「うまく感染する」という考え方にシフトしていく必要があると思います。
最近の報道で耳にするのが『医療崩壊』という言葉です。このまま感染者数が増えれば重症患者を収容しきれなくなり,大変なことになると連日報道されています。
しかし,真面目な国民性のおかげで,欧米に比較して日本の患者数の増加はかなり抑えられています。なぜ『医療崩壊』という言葉が出てくるのでしょうか?
医療崩壊を招こうとしている最も大きな原因は,次に述べるように新型コロナウイルスへの国の対応が誤っているからであると私は考えます。現場で私と同じ考えを持っている医師は少なくありません。
2.なぜか指定感染症になっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
人に感染するコロナウイルスには,現在7種類があります。そのうち4種類は病原性が低く,普通の風邪や胃腸炎を引き起こします。残り3つが重篤な肺炎を起こしやすいコロナウイルスで,①SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス:2002年中国に出現)と②MERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス:2012年サウジアラビアやカタ-ルなどに出現),そして今回問題となっている ③SARS-CoV2(新型コロナウィルス:2019年)です。
①SARSの死亡率は約9.6%,②MERSは35%と推定されています。今回の新型コロナウイルスの死亡率は年齢によって大きく異なり,高齢者ほど高くなっていますが,最近の死亡率は数か月前と比べるとどんどん低下しており,0.9%程度と報告されています。ひょっとすると,ウイルスの弱毒化が進んでいるのではないかといわれる所以です。
死亡率は,死亡者数÷感染者数で算出されます。分母が変わると大きく変化します。現在報告されている感染者数とは,PCR等の検査を受けて陽性となった人の数です。しかし,感染が判明すると軽症であっても報告され隔離されてしまう現在の体制では,感染していても検査を受けない人がある程度存在するものと思われます。つまり,死亡率は0.9%よりもっと低いことは明白です。また,我が国の場合,第1波とそれ以降ではPCRの検査可能件数が飛躍的に増加していますので,第1波の時のPCR陽性者数と重症者の比率をそれ以降,すなわち第2波や第3波と単純には比較できません。
いずれにしてもはっきり言えることは,SARSやMERSと比較して,新型コロナウイルスの死亡率は明らかに低いということです。それなのにSARSやMERSと同じ取り扱いをしないといけない指定感染症になっているところに,『医療崩壊』が懸念される大きな原因があります。
例年冬から春にかけて流行する季節性インフルエンザは,年によりばらつきはあるものの感染者数は数百万人~1千万人,死亡者数はインフルエンザそのものによる死亡は数千人,関連死まで含めると1万人です。そのほとんどが高齢者です。それでもインフルエンザは五類感染症なので,隔離や消毒などは要求されません。求められるのは発生動向調査のみです。
誤嚥性肺炎によって死亡する高齢者は年間3万人です。
一方の新型コロナウイルスの感染者数は12月31日時点で24万人(検査を受けていない人もおり,もっと多いと思われる),死亡者数は関連死を含めて約2千5百人です。
小児も,インフルエンザ脳症により毎年数十名~百名ほどが死亡し,その倍以上の子どもたちが後遺症を残しています。
一方,健常な20歳以下の若者,小児で新型コロナで死亡した者は現時点では1人もいません。
3.医療崩壊を防ぐためには,COVID-19を指定感染症から外し,感染者は原則入院という対応を中止すべき
現在,新型コロナウイルスは指定感染症になっており,SARSやMERSと同様に二類感染症として取り扱うことになっています。二類感染症には他に結核,鳥インフルエンザ(H5N1)などが含まれます。しかし,先に述べたようにCOVID-19の致死率は,SARSやMERS,鳥インフルエンザと比較して明らかに低いのです。
感染拡大初期の大きな混乱から,この感染症に対して方向性が定まらないまま,ずるずると指定感染症の扱いを続けているように思えてなりません。
しかし,これはもはや現実的ではありません。以下の理由から,早晩COVID-19を指定感染症から外すべきなのです。
まず,現在の法体制では,症状が軽い若い世代も原則として入院またはホテルで療養となってしまいます。全く元気な若者が暇を持て余して病室で筋トレをしている傍らで,厳重な防護服に身を包んだ医師と看護師が佇んでいるという滑稽極まりない風刺画が目の前に浮かびます。
そしてこれら軽症の若者の入院費用も,すべて国費で賄われています。税金の無駄遣いと言うほかありません。
例えば,インフルエンザと同じ五類感染症にして,COVID-19の患者を診療した医師(開業医も含む)が,麻疹などと同様に全数届け出と検査(感染症法第11条の適応)を,しばらくの間行うようにすればよいと思います。そうすれば隔離も不要になり,基本的に自宅で療養することになります。
新年になりさらに感染者が増えています。そのため入院ベッドが不足し,入院できずに自宅待機者が増えていると,このところ連日報道されています。
ところが,コロナが指定感染症から外れれば,一般の病院でもインフルエンザと同様に,コロナ患者を入院させることができるようになります。重症者もコロナ専用病院だけではなく,集中治療室のある民間の病院でも収容することが可能になります。これが最も現実的でスマ-トな対応ではないでしょうか?
COVID-19を指定感染症から外し,少なくとも感染者は原則入院という対応を中止するだけで,『医療崩壊』は簡単に解消されます。
そして,COVID-19が五類感染症になれば,何といっても医療機関や介護施設に勤務している人々のストレスがなくなります。
現状だと,ある職員が感染したことが判明すると,当事者のみならずその医療機関や介護施設全体が濃厚接触者多数ということで閉鎖・休業に追い込まれかねません。職員だけでなくそこを利用している多くの患者さんとその家族にとっては,大きな不便を強いられることになります。
他の疾患,例えば心臓病やがんなどで手術を待っている患者が,(本来は入院する必要のない)コロナ患者のために手術が後回しになり,手遅れになる危険性も危惧されます。さらに ‘あの施設でコロナが出た’ という風評被害は,再開後の施設の運営に多大な悪影響を及ぼします。
「万が一自分が感染したら大変なことになる」という医療関係者の感じているプレッシャ-とストレスは計り知れないものがあります。そういったプレッシャ-に押しつぶされそうになりながらも重労働をこなしている医療従事者の心の負担を,二類感染症から格下げすることにより大きく軽減することができます。
具体的には,職員の感染が発覚しても,症状のない他の職員に対する検査や隔離は不要となり,症状のある職員だけを休ませて,順調な回復が見られれば発症後1週間程度で職場復帰という道筋が得られます。現在のような大げさな防護服を着用して患者の対応に当たる必要もなくなり,防護服の脱着や過剰な消毒などに要している無駄な時間が倹約できます。
以上,COVID-19は,インフルエンザへの対応とほぼ同じにすればよいと思います。これが最も現実的ではないでしょうか。
4.なぜ子供たちは新型コロナウイルスに感染し難いのか?
若い世代ほど新型コロナウイルスに感染し難く,感染しても軽症ですむという事実は,誰もが納得しているところです。特に,15歳以下(中学生以下)の子どもたちへの感染は,ほとんど認められていません。
それでも時々,「○○小学校でクラスタ-」というような報道がなされることがあります。これを鵜呑みにすると, ‘なんだ,小学生も新型コロナウイルスに感染するんじゃあないか’ と勘違いされてしまいます。しかしこれは,「PCR検査が陽性=感染している」という誤った解釈に起因した誤った報道であり,よく調べてみると ‘実は感染はしていない’ ことがわかります。
ここでPCR検査についてお話しておきます。これはPolymerase Chain Reaction(ポリメラ-ゼ連鎖反応)の略で,検体の中にあるウイルス遺伝子を十分な量まで増幅し,ウイルスの存在を確かめる検査法です。ほんのわずかなウイルスも検出し得る優れた検査法です。
大人は新型コロナウイルスに感染します。家族内では感染した親が,学校や幼稚園・保育園では先生がウイルスをまき散らします。ウイルスは子どもたちの気道の粘膜に付着します。これらのウイルスは,当然PCR検査で検出されます。
ところが,感染が成立するためにはウイルスが気道の細胞に入り込んで増殖する必要があります。細胞の表面に付着しただけでは,ウイルスは存在するけれども ‘感染している’ とはいえないのです。
ウイルスが細胞内に入り込んで増殖することにより初めて感染が成立し,他人への感染力も生まれます。ここで,ウイルスが細胞内に入り込むためには「ACE2」という細胞表面に存在する突起のようなものが必要になります。新型コロナウイルスはこの突起に結合して細胞内に入り込むのです。
この突起の数は高齢者と喫煙者で増加します。高齢者や喫煙者で感染リスク・重症化リスクが高くなるのはそのためです。
ところが,子どもたちの体内の細胞にはこの突起が極端に少ないのです。そのため,ウイルスは細胞表面には存在するが細胞内に入り込めず増殖できない⇒感染が成立しない⇒他人にも感染しない,という公式が成り立ちます。これが,幼少児ほど新型コロナウイルスに感染し難いという大きな理由です。
他にも,子どもたちは日頃から常に多くのウイルスに感染しており,大人に比べて自然免疫力が亢進していることも感染し難い理由の1つと考えられています。
昨年12月に東松山市の小学校と,吉見町の保育園で ‘クラスタ-騒ぎ’ がありました。いずれも同居している家族が感染して,家庭内で家族にウイルスをばら撒いたというものです。
PCR検査の結果は,同居している小学生も保育園児も陽性でした。ところが,同じクラスの小学生と園児全員に対してもPCR検査が行われましたが,陽性者は1人も出ませんでした。発端となったPCR検査で陽性だった子どもたちにも,何の症状も現れませんでした。
これらは,「子どもたちはウイルスに暴露されればPCR検査では陽性となるかもしれないが,発症はし難い」という事実を裏付けています。
同様に小学校で担任が感染し,教室でウイルスがばら撒かれて複数の児童がPCR検査で陽性となった事例でも,検査陽性の子どもたちは誰も発症せず,周囲の人々にも感染は起こっていません。
PCR検査で陽性=感染しているという誤った認識から「○○小学校でクラスタ-」といった,いい加減な報道が平気でなされてしまいます。多くの市民はこれを鵜呑みにし,子どもでも感染するのだ,すぐに休校にすべきだと,誤った判断を下してしまうのです。
新型コロナウイルスが人へ感染するのは,おおよそ発症前2日から発症後5日ということがわかっています。
現実的には,PCR検査で陽性の子どもは念のため1週間休ませ,症状のない他の子供たちは普通に登校・登園させるというのが,妥当な対応だと考えます。
昨年3月から行われた3ヶ月間の休園・休校は,科学的根拠に基づいたものではなく安倍元総理の独断で行われたもので,全く無意味でした。
無意味どころか子どもたちの教育の機会を奪い,子どもたちを屋外生活や社会的交流の減少に起因した抑うつ傾向・情緒障害に陥らせ,さらに家族の生活や社会経済等に多大な影響を与えました。
親子とも自宅に引き籠るようになりストレスが高まり,家庭内暴力や子ども虐待のリスクが高まりました。
親の失業や収入減のため,貧困家庭はさらに厳しい状況になり,福祉活動も滞り「子ども食堂」などのボランティア活動も停止し,給食や子ども食堂の食事で食い繋いでいた子どもが食生活に困窮する事態も生じました。
乳幼児健診も延期・中止となり,子どもの心身の健康問題や母親の育児不安の早期発見,介入の機会を逃す危険性が高まりました。
こと子どもに関する限り,COVID-19が直接もたらす影響よりも,このようなことに関連した健康被害のほうがはるかに大きかったことが認識されました。
今後どんなに新型コロナウイルス感染症が拡大しても,休園・休校は二度と行うべきではありません。
子どもたちが新型コロナウイルスに感染する可能性は非常に低いことと,万が一感染しても重症化し難いという事実が,その理由です。
5.あまりにも酷い我が国の新型コロナへの対応
本日1都3県で再び非常事態宣言が出されました。これに本当に意味があるのなら国民も納得するかもしれませんが,はっきり言って効果はまず期待できないと私は思います。
何度も言いますが,もはやコロナウイルスの拡散を終息させるというような状況ではないのです。数カ月間続く寒い季節に,コロナウイルスはますますその勢いを増すことは明白です。
コロナを封じ込め感染しないようにするのではなく,いかにうまく全国民がゆっくり感染していくかが重要になってきます。
またもや政府や知事たちの気まぐれで営業時間の短縮を要請されている飲食業者,Go To トラベルの突然の中止で大打撃の旅館・ホテル・旅行会社,そしてそこに食材を提供する漁業・農業・畜産業などの生産者のみなさんの生活はどうなってもよいというのでしょうか?
政府のコロナへの不適切な対応のせいで,多くの人が職を失い収入が途絶えてしまっています。好んでコロナに感染したわけではないのに,同情されるどころか非難され心に傷を負い,生きる希望を失った人たちが大勢います。
日本では毎年約2万人の人が自殺していますが,今年は自殺者がさらに1万人増えるだろうと言われています。そして,自殺するのはまだまだこれからという多くの将来のある若い世代です。
人間はいつか寿命が来て亡くなります。余力のない80歳90歳のお年寄りが,たまたま新型コロナウイルスに感染して死亡したことを,大きく取り上げて騒ぎ立てる必要があるのでしょうか?
おそらく年間で,コロナ関連死者数は多く見積もっても4千人程度と思われます。その多くが,ちょっとしたきっかけで亡くなっても不思議ではない高齢者です。ひどい認知症を患ったり新型コロナ以外の疾患にかかっている高齢者で,救命できたとしてもその後の生活が非常に困難と思われる人に,人工呼吸器やECMOを駆使し,多大なエネルギ-を使って救命する必要性があるでしょうか?
不要な延命は避けようという流れが近年やっと確立され,無意味な人工呼吸器の装着や胃婁の造設などは減少する傾向にありました。ところが,今回のコロナ騒動においてはそういったことが忘れ去られ,救命が不要と思われる人にも一律に過剰な救命措置がとられているように思われます。
もっと先に救うべき人がいるのではないか?助けるべき人の順位をつけるためのトリア-ジが,正常に機能していないような気がします。
二類感染症の指定が外れれば,コロナに罹っても強制的に病院に搬送されることもなくなり,自宅や介護施設などで寿命を全うできるようになります。
介護施設の職員にとっても,日ごろから親身になってお世話してきたお年寄りを最後まで自分たちの施設で看取ってあげることができれば,その家族も含めて,どんなにか心の充足が得られることでしょう。
至急,国は新型コロナに対する対応を変えるべきです。申し訳ありませんが,大臣も知事も日本医師会・東京都医師会の幹部もテレビによく出てくる感染症の専門家といわれる医師たちも,大局観をもっていないように感じます。実際の医療現場でコロナ患者に対応している方々の意見を,もっと聞くべきです。
このような人たちに,この国のコロナへの舵取りを今後も任せることに大きな不安を抱いているのは,私だけではないと思います。
6.日本が今後やるべきこと
1)新型コロナウイルス感染症の二類感染症指定を外し,感染者は原則入院という対応を止めること
現在最も大きな問題は,ほとんどの感染者が軽症であるのに報告と隔離が義務付けられていることです。
一部の重症者を除き,軽症者はインフルエンザと同じように家庭で約1週間の療養とすれば,感染者本人の負担も減り,軽症者を収容していた病院にも物理的・精神的な余裕が生まれます。
家族が感染して家で療養する場合,マスクの着用,家庭内の隔離,手洗いと換気で,他の家族への感染はかなり防げることがわかっています。それでももし他の家族が体調不良を訴えた場合には,速やかにかかりつけ医を受診するという流れになります。
職員が1人でも感染したら2週間診療を中止するなどという非現実的な対応を強制されることもなくなり,すべての医療機関の職員が過度のストレスから解放されます。
風評被害を恐れ発熱患者の診療を尻込みしている医療機関も,従来通りの診療ができるようになります。
過剰な防護服を着用しての診察も不要になり,防護服の脱着や過度の備品や建物の消毒などに要していた時間が倹約できます。過度の消毒による物品の劣化が防げます。フェイスシ-ルド,アクリル板といった備品も不要になり,無駄な出費が減ります。
飲食店もホテル・旅館も通常通りの営業ができるようになります。多くの産業が復活し,多くの人々が再び収入を得られるようになり,経済的にも精神的にも安心できる生活が得られるようになります。
連日の過剰な報道も減り,人々が落ち着きを取り戻せます。
2)子どもたちの特性をきちんと理解し,不要な措置や制限をなくすこと
先に述べた理由から,15歳以下の小児,特に小学生以下の子どもたちはまず新型コロナに感染する可能性はゼロに近いといえます。
マスクの着用,アルコ-ル消毒,三密を避けるなどの行為はすぐに中止すべきです。
マスクは未熟な子どもたちの呼吸機能をさらに低下させます。マスクをして遊んだり運動したりしているのを見ると,具合が悪くなるのではないかととても心配になります。また,マスク着用が顔面の皮膚の炎症を引き起こし,湿疹・ニキビが目立つ子供が増えています。
さらに,まだうまく会話ができない0~3歳くらいの子どもたちは,表情から他人の心情を感じ取ります。周りの大人がマスクをしていると,幼い子どもたちは相手の気持ちが読めず,情緒不安定になります。
園の先生方も,体調が悪くないのであればマスクを着けるのは止めたほうが良いと思います。子どもたちはコロナに感染することはないし,先生方に感染させることもないからです。
咳やくしゃみ,おしゃべりによる飛沫防止のためのマスクの着用は,マナ-としても推奨されます。また,感染を恐れる人が予防のために着用するのも問題はありません。
ただ,屋外歩行や運動中などにも常にマスクをしていないと非国民とみなされるような現在の風潮は,改めて見直されるべきです。マスクの弊害は先に述べたとおりです。
マスク着用は義務ではなく,個人個人の判断に任せるべきです。特に,小児にマスクを着用させる理由がないのは,すでに述べたとおりです。
過度のアルコ-ル消毒により手指の皮膚がカサカサになり,痛くて辛いという子どもも大人も増えています。石鹸にもウイルスを失活させる十分な効果があるので,そのような方にはアルコ-ル消毒は止め石鹸で洗うように指導しています。でも,石鹸も洗いすぎると皮脂が欠乏し手が荒れるので,洗いすぎにも注意が必要です。
そもそも子どもはコロナに感染しないのですから,手洗いは原則として不要です。手が汚れたと思った時にだけ洗えばよいのです。
ここまでお読みいただければ,子どもたちに三密が不要というのも,皆さんはすぐに納得してくださると思います。子どもたちに距離を置かせる措置は,子どもたちの心をも疎遠にします。
マスクを外させ,机の位置を元に戻し,気兼ねなくおしゃべりや遊びのできる以前の子どもたちの生活に戻しましょう!
これまで読み進めていただいた皆様,本当にありがとうございます。でも,まだ私の意見に違和感を持つ方がおられるかもしれません。
しかし,今まで私が述べてきたことは私の勝手な空想でも,口からの出任せでもありません。正しい情報に基づいた,偽りのない意見です。ご理解いただければ幸いです。
7.最後に
コロナのことばかりに気を取られて,他のことがおろそかになっていないでしょうか?
アメリカ合衆国では本日,暴徒化したトランプ支持者が連邦議会に窓を壊して乱入しました。代表人による選挙を妨害するためです。この選挙が終了すれば,バイデン氏が晴れて大統領に就任することになるのですが,直前に行われたトランプ大統領(まだ大統領なのです)の集会で,トランプが支持者を前に「連邦議会場へ行こう」とけしかけたのです。まさにアメリカでは民主主義が大きな危機に瀕しています。
香港では民主化運動に携わったとして53名の民主派議員が逮捕されました。他にも,南シナ海における領土の一方的な拡大など,中国の最近の好き勝手なふるまいは目に余ります。
ロシア,北朝鮮,イラン情勢など,コロナにばかり気を取られているととんでもないことが起こる可能性のある現代です。
暗い話題が多い一方で,身近で日常的に頑張っている人々が,日本にも世界にもたくさんいます。
コロナの報道ばかりに目を奪われずに,コロナから一歩距離を置いて,今年は改めてもう一度,少し自分で考えて行動してみませんか?
1人の医師として,これからも必要があれば発信していきたいと思います。
最後までお読みくださり,ありがとうございました。
新型コロナウイルスについて
2020/04/07
いよいよ本日,埼玉県にも非常事態宣言が発令されることになりました。
東京に近い県南と,いわゆる「田舎」のこのあたりでは,人口密度も違うし,対応の仕方には差をつけた方がいいのではないかとも思いますが,いずれにしても,今後の国や県の動向には注目していく必要があります。
新型コロナが問題になり始めてから約2ヶ月,小・中・高等学校が休校に追い込まれてから1ヶ月が経ちました。大きな混乱の中,少しずつわかってきたこともあります。
新型コロナについて,現時点での私の知見を述べさせていただきたいと思います。
コロナウイルスは,風邪の原因となるウイルスの1つで非常にポピュラ-なものです。小・中学生はまだ最近までしょっちゅう風邪をひいていた年齢です。幼稚園・保育園児などは現在もたびたび風邪に罹っています。でもそのおかげで新型コロナにも罹りにくいし,罹っても軽く済む可能性が高いのです。
また,成人でもほとんどの方は,新型コロナに感染したとしてもただの風邪で済むはずです。
一方で,ギリギリの体力で生きている老人,免疫能の低下する基礎疾患のある方,喫煙者などは急速に肺炎等に進展し,重症化する可能性があるので注意が必要です。
日本も世界の国々も,新型コロナウイルスを封じ込めようと躍起になっています。水を差すようで悪いのですが,ウイルスは世界中にばらまかれてしまいましたから,終息させるのはおそらく難しいと私は思います。
人は初めてのウイルスには必ず感染します。新型コロナは文字通り新しいウイルスなので,これから数ヶ月~数年かけて,全人類が感染していくと思います。問題はその流行の速度です。
爆発的に患者が増えると,病院や診療所はパニックに陥ります。一部の方は重症化しますから,ICU(集中治療室)も不足することになり,いろいろな障害が発生します。
現状が続けば医療崩壊が起きるという懸念は,すでにいくつかの国で現実化しています。
望まれるのは,流行がゆっくりと進んでくれることです。
怒られるかもしれませんが,一度感染すれば免疫が残るので,重症化さえ避けられるのであれば,全国民が早目に感染してしまった方が良いという考え方もあります。
幸い健常人はほとんどが軽症で済みますので,症状もないのに検査が陽性なら入院などという現在の対応は見直すべきです。軽症の人はインフルエンザと同じ扱いにして,かかりつけ医療機関を受診し自宅で療養,重傷者を入院させて適切な処置を行うというふうにしないと,医療は崩壊します。
おそらく,もうしばらくすると「あら,貴方も新型コロナに罹っちゃったの? 私も先週なっちゃったわ。お大事にね。」というふうになっているのではないかと思います。否,そうならなければおかしいです。
2009年に新型インフルエンザが流行した時に似ています。当初は混乱しましたが,半年も経つと何事もなかったかのように落ち着きました。新型インフルエンザの毒性がそれほど強くはないことが判明したのと,迅速検査が簡単にできタミフルなどの治療薬もあったからです。
今回は検査法と治療薬の点がインフルエンザとは違うため,世界中が混乱しています。しかし,もう暫く時間はかかりそうですが徐々に気づくはずです。そこまで恐れる必要はないのでは,と。
あまり報道されませんが、毎年インフルエンザによる肺炎で数千人以上の老人が亡くなり、脳炎・脳症で数十人~百数十人の子供が死亡したり重い後遺症を残しているのです。
私はコロナよりもインフルエンザの方が、特に子供たちにとっては危険なウイルスだと思っています。
外国で多数の死者が出ているニュ-スを見て,大きな不安を感じておられる方も多いと思います。しかしそれには理由があります。
イタリアやスペインは医療費を削減した結果,医師も薬も不足,医療体制も貧弱,それに加え楽観的で濃厚接触の習慣があり喫煙者も多いのであれだけの死者が出ています。
アメリカは医療の水準は高いのですが,医療体制は三流です。『金のない奴は死ね』という国なのです。日本のような国民皆保険制度はなく,お金持ちは高い保険料を払って民間の保険に加入しているので良いのですが,多くの国民はお金が払えず無保険です。ちょっと熱が出たくらいで受診すると,10万円くらい平気でかかりますので,おいそれとは医療機関には行けません。今回は,家でギリギリまで我慢して様子を見ていたがいよいよ危なくなった患者が,命には代えられぬということで医療機関に殺到したものの,既に手遅れで次々に亡くなっているのが現状です。
日本は医療制度は世界一,医療水準も世界のトップレベルです。イタリア,スペイン,アメリカと同じような状況になるはずがありません。でもその根底には,我が国の医療は医師たちの自己犠牲の上に成り立っているという事実があることは,あまり知られていません。
重症化する可能性のある人を早期にトリアージして,死亡者数をできるだけ減少させるために,現場の医師をはじめとする医療関係者は必死に頑張っています。この辺のことを,ぜひ忘れないでいただきたいと思います。
現在のところ,医療機関の職員に感染者が出たらその医療機関は2週間閉鎖というのが実情です。しかし,そんな対応が続けば,おそらく日本中の医療機関が閉鎖に追い込まれ,多くの患者さんが困ることになるでしょう。新型コロナ以外にも大変な病気は沢山あることを忘れてはいけません。
近いうちに,新型コロナウイルス患者でも軽症者は,病院ではなく自宅か軽症者専用の施設で療養することになるでしょう。そして,解熱して何日経てば社会復帰してよいという指標が,一刻も早く示されるべきです。
いずれは,インフルエンザと同じような対応で済むようになると私は考えています。
また,経済が酷いことになっていることについても,早急な対応が求められます。このまま自粛が長引けば,飲食業・観光業を中心とした様々な業種の方々は大きな減収となります。生活が脅かされることになります。
音楽や演劇など,芸術・文化の関係者にも大打撃です。スポーツ界も同様です。
特にパートや非正規労働者の方々は,失業し収入が0となってしまう危険性が大きいです。
政府の迅速かつ適正な対応が非常に重要です。ここで対応が遅れると,日本経済は悪化の一途を辿りどん底の状態に陥るでしょう。
日本ばかりではありません。リ-マンショックの時以上の,世界恐慌の危険性をも感じます。
そうならないように祈りたいと思います。
子どもたちは長期の休校により,かなりストレスが溜まっています。学力・体力の低下も深刻です。親たちの負担も大きくなっています。小学校・中学校・高等学校は,感染する可能性を考慮した上で,できるだけ早く授業を再開するべきです。
ただ、子どもが感染した場合に不利益を被る可能性のある家族がいる家庭などを考慮し,子どもを休ませるという選択肢を選べる権利を残す必要があります。
テニスコ-トさえも閉鎖されて使えないという子どもたちからの不満の声が聞かれます。密集状態を作らない限り,屋外で感染する可能性は0に近いと言えます。
屋外の活動の制限は,早期に撤廃するべきです。屋外活動が再開されれば,非常に不安定な状態に置かれている子どもたちの健康・精神状態を改善させる大きなきっかけになるでしょう。
政治・行政のトップに立つ方々が,現状を認識し,正しい方向に舵を切り直してくれるよう,切に願っています。
今こそ政治家の資質が試されるときはないと思います。
これをお読みくださっている皆様も,ぜひ厳しい目を持って,この国の対応を見守っていただきたいと思います。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。
不活化ポリオワクチンについて
2012/08/13
まだまだ暑い日が続きますね。これをお読みいただいている皆様,お元気ですか?
以前のエッセイは,ホ-ムペ-ジを管理していた会社のアクシデントで,全て消滅してしまいました。私としてもやる気満々で始めたコラムだったので,すっかり意気消沈してしまい,しばらく書く気になれませんでした。
本日から4日間夏休みをいただいております。ようやく自由な時間ができたので,久しぶりにエッセイを再開したいと思います。
今回は,『不活化ポリオワクチン』についてお話させていただきます。
9月1日から,現行の生ポリオワクチン(2回の経口接種)は定期接種からはずされ,代わって不活化ポリオワクチン(4回の皮下接種)が定期接種となります。
生ポリオワクチンは,2回の接種により強い免疫力が一生涯残るのが最大のメリットでした。一方で,約百万人に1人の確率でポリオ様麻痺が生じるという問題がありました。
今回導入される不活化ワクチンは,先進国の多くで導入されており,ポリオ様麻痺を起こす危険性がないのが最大の長所です。一方で,4回接種しても免疫力は約10年で低下してしまうのが欠点です。
そのため,不活化ポリオワクチンを導入している多くの国々では,10年ごとに成人にもワクチンの追加接種を行っています。
我が国でもそうなるのかどうかということを,7月26日に浦和で行われた不活化ポリオワクチンの説明会で,比企医師会代表で私が質問したところ,そのような議論が出るような状況ではまだないということでした。
西南アジアやアフリカの一部の国々で,いまだにポリオは流行しています。ポリオに感染しても,ほとんどの人は不顕性感染で症状が出ませんが,千人に1人の割合でポリオは発症します。 将来,免疫力の弱い国民が増えたところに,不顕性感染の状態にある人がこれらの国からポリオウイルスを日本に持ち込んで,ポリオの大流行が起こらないかという不安があります。
実際,アフガニスタンに出兵するアメリカ兵は,必ず生ポリオワクチンを飲んでから出兵することになっています。
1950年台から1960年頃にかけて,我が国でもポリオの大流行が起こりました。これに対し,生ポリオワクチンの接種が始まり,まもなくポリオの流行は収まりました。我が国では最近30年以上,自然株のポリオウイルスによるポリオの発生は1例もありません。これはひとえに,生ワクチンのおかげであると言えます。
マスコミやインタ-ネットなどの偏った情報により,生ポリオワクチンの接種率が,この1年間でかなり低下しました。不活化ポリオワクチンを個人輸入して,接種を行った医療機関もあり,そちらで接種をなさった方もおられると思います。
たばた小児科では,不活化ポリオワクチンをわざわざ輸入して接種するつもりは全くありませんでした。
その理由は,
①百万人に1人という極めて低いリスクを心配して,非常に効果のある優れた生ワクチンを避けて,わざわざ不活化ワクチンを接種する必要はない。
②日本国内で未承認のワクチンで副作用が生じた場合,何も保証されない(そんなワクチンを接種してよいのか?)。
③任意接種になるので,接種するのにお金がかかる(生ポリオワクチンは定期接種なので無料)。
ということです。
私の仲間の小児科医たちも全員が,個人輸入をしてまで不活化ポリオワクチンを接種する必要はないという考えでした。
ちょっと私の考えを発信するのが遅くなってしまい,驚かれたり気分を悪くなさった方もおられるかもしれません。ただ,この9月から生ポリオワクチンは定期接種からはずれます。今後は不活化ワクチンが定期接種となります。これは事実です。
要は,再び我が国でポリオの流行が起こらなければよいのです。そのためには,成人に対する不活化ワクチンないしは生ワクチンの追加接種制度の確立が重要と思われます。それと共に,全世界からポリオウイルスが1日も早く絶滅するよう,努力が続けられるべきでしょう。
不活化ポリオワクチンは生後3ヵ月から接種が可能です。生ワクチンの接種が2回終わっていないお子さんは,不活化ワクチンの接種が必要です。また,個人輸入の不活化ワクチンの接種が4回終了していないお子さんも,不活化ワクチンの追加接種が必要です。
接種回数や,接種するタイミングについては,遠慮なくお尋ねください。
11月からは,現行の三種混合ワクチンに不活化ポリオワクチンが混合された四種混合ワクチンも発売されます。これは,一度も三種混合ワクチンもポリオワクチンも接種したことのないお子さんが対象になります。
四種混合ワクチンについての詳しいお知らせは,また改めて行いたいと思います。
院長紹介欄にも書いてありますが,私は比企医師会小児科担当理事で,小児救急委員会と予防接種委員会の委員長を務めています。医師会の先生方への予防接種の説明や連絡,市町村との協議などを先頭に立って行っています。
予防接種についてご質問やご相談がありましたら,遠慮なくたばた小児科までどうぞ。
(今回は,エッセイというよりはワクチンの説明とお知らせが大半を占めてしまいました。申し訳ありません。)