医療法人たばた小児科
〒355-0153
埼玉県比企郡吉見町久米田616-8
0493-54-8822
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今日から7月,2021年も後半です。オリンピックも賛否が交錯する中,1年遅れで行われそうですね。ここまで来てしまったのなら,せめて何事もなく無事に終了するよう,一国民として祈っています。
この半年間,相変わらず連日報道のトップを独占し続けたのは,やはり新型コロナウイルス関連のニュ-スでした。変異株の話題も過熱気味ですが,1月のエッセイに書いた通りウイルスの変異は常に起こっているので,私はあまり気にはなりません。そのうち新種の日本株(ε株?)が登場し,オリンピックと併せて話題になるかもしれません。
さて,何よりこの半年間のコロナ関連で最も注目された大きな変化といえば,新型コロナワクチンが承認され接種が開始されたことでしょう。
1.RNAワクチンとその有効性
現在日本では,ファイザ-社が開発したRNAワクチンが主に接種されています。大規模接種会場では,モデルナ社のRNAワクチンも使用され始めました。
ワクチンの目的は,ウイルスを攻撃する武器である中和抗体を体内で製造させることです。インフルエンザワクチンに代表される従来のワクチンは,ウイルスを攻撃する中和抗体を体内で作らせるために必要な抗原(ウイルス表面のスパイクタンパク)を体外から注入します。
今回使用されているRNAワクチンは,新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子情報を利用したワクチンで,体内に直接メッセンジャーRNAを注入し,細胞内でスパイクタンパク質を作らせ,そのスパイクタンパク質に対する中和抗体を作らせるものです。
何しろ人類にとっては新しいワクチンですから,副作用もはっきりとわかっていないわけです。特に中長期的な副作用は今後の課題であり,いまだに不安を抱えている方も少なくないかもしれません。私も個人的には,まず医療関係者から接種をということもあり,実験台にされるのかという反発は内心ありました。
しかし,その後のワクチンの進捗状況を見ていると,少なくとも短期的には重篤な副反応は当初言われていたよりも少ないようです。発熱,局所の疼痛,倦怠感,頭痛などの軽い副反応は,比較的若い世代に,1回目よりは2回目に多くみられています。
何よりも,新型コロナウイルスに対するRNAワクチンは正直なところ,これまでのワクチンの歴史から見ると驚くほど有効率が高く,ファイザー社のRNAワクチンで95%、モデルナ社のRNAワクチンで94.1%の有効率(発症予防効果)と報告されています。
インフルエンザに対する不活化ワクチンの有効率は40~50%程度とされているので,出来の良いワクチンであることが分かります。
実際,高齢者へのワクチン接種が進んでいる国や地域では,新規感染高齢者数は有意に減少してきています。
2.ワクチン接種が推奨されるべき人々とは
まず,今回の新型コロナの世界的流行で最も大きな問題は何でしょうか? 一言でいえば,一部の人々が重症化し,死亡するということです。
さらに言及すれば,死亡しているのはほとんどが70歳以上で,高度の動脈硬化性の基礎疾患をもった高齢者です。視点を変えてみると,基礎疾患のない若い世代ほど感染しても重症化し難いということがわかります。
ちょうど半年前に書いたエッセイの中で,20歳以下の死亡は0名と述べましたが,あれから半年たった現時点でも,我が国における20歳以下の死亡者数は0のままです。
20歳代の死亡は全国で8名,30歳代では27名,40歳代では103名でやっとここで全人口死亡者数の0.1%となります。若い世代の死亡者数も少しずつ増えてきましたが割合としては非常に少なく,28歳で死亡した元力士に代表されるように糖尿病などの基礎疾患があり高度の動脈硬化を伴った人たちが,重症化ないしは死亡しているようです。
従って,ワクチンを接種すべき対象はまず,高齢者で動脈硬化性の基礎疾患を有する者だということは容易に理解できます。続いてそれよりも若い世代で基礎疾患を有する者という順番でしょうか。
高齢者の重症化や死亡が防げるようになれば,若い世代が感染しても現在のように騒がれなくなるでしょう。若い人ほど重症化しないので,感染しても入院も不要となり医療現場の混乱も減り,インフルエンザと同じような扱いになっていくものと思われます。
3.12~15歳の子どもたちに新型コロナワクチンは必要なのか
当初ファイザ-社のワクチンの接種適応年齢は16歳以上でした。それが突然,12歳以上の小児に接種適応年齢が拡大されました。国もこれに追従して,12歳以上の子どもたちにもワクチン接種を行うという方向に方針転換しようとしています。
でも,12~15歳の小児にワクチン接種は本当に必要なのでしょうか?
厚労省の新型コロナウイルス感染症の国内発生動向では,6月23日時点でPCR検査陽性者数の累計は781534名,10歳代で58545名,10歳未満で26361名です。20歳未満でもPCR検査陽性者は一定数報告されています。
しかし,1月のエッセイにも書いたように『PCR検査で陽性=新型コロナに感染』ではないのです。その後も私なりに情報を集めていますが,間違いなくコロナに感染した(発症し,周囲にも感染させた)という者は,15歳以下の小児では今のところ見当たりません。
埼玉医科大学総合医療センタ-のPICU(小児の集中治療室)に勤務する小児科医から話を聞くと,「15歳以下の小児は常時数名県内の病院に入院しているが,家族が感染して入院し,子どもはPCR検査では陽性だが発症はしていない。しかし,家に一人でおいておくわけにはいかないので,社会的な入院です」とのことです。さらに,「有症状であれば,うちの病院かさいたま市の県立小児医療センタ-に入院になるのだが,今までそのような小児は1人もいません」と言っています。
毛呂山町にある埼玉医科大学病院小児科に勤務する医師にも聞いてみましたが「15歳以下でコロナを発症して入院した患者はいない」とのことでした。
若い人ほど,ワクチンの副反応がみられやすく,症状も強く出ます。ファイザ-のデ-タでも,12~15歳での接種による副反応は,若い世代の中でも最も顕著です。
以上のような事実から考えれば,新型コロナに感染する可能性が非常に低い12~15歳の小児への新型コロナワクチン接種は,無意味であると思われます。無意味どころか,副反応の確率と症状の強さを考慮すれば,むしろ有害であると言えます。ワクチン接種は避けるべきだと私は考えます。
モデルナのワクチンの接種適応年齢は18歳以上です。個人的には高校生のワクチン接種にも懐疑的なので,このくらいで良いのかなと思っています。ファイザ-に対抗して, 今後モデルナも接種適応年齢を下げてくるかもしれませんが。
ワクチンをさらに販売して儲けようというワクチン会社の策略の片棒を担ぐ必要はありません。国は,12~15歳の小児に新型コロナワクチンを接種して本当によいのか,もっと慎重に検討するべきです。
改めて意見を述べたいと思いますが,2013年に小学校6年生から高校1年生を対象に始まった子宮頸がんワクチンは,僅か2カ月で「勧奨を差し控える」という異例の措置がとられ,今もその状況が続いています。その結果,70%以上あったワクチンの接種率は1%程度にまで激減しました。接種を促す通知が来ないので,自分が定期接種の対象であることやワクチンの存在すら知らない人も増えています。
このような対応は世界でも日本だけです。世界100カ国以上で評価され接種されている,癌を予防できる唯一のワクチンです。12歳以上の小児に接種するのであれば,新型コロナワクチンではなく,子宮頸がんワクチンの接種を再開する方が,比較にならないくらい現実的で有意義なのではないでしょうか。
もう一度言います。
12歳から15歳の小児への新型コロナワクチンの接種には,私は強く反対します。
