小児科、内科、循環器科、アレルギー科のクリニックです

    新型コロナウイルスについて

     いよいよ本日,埼玉県にも非常事態宣言が発令されることになりました。
     東京に近い県南と,いわゆる「田舎」のこのあたりでは,人口密度も違うし,対応の仕方には差をつけた方がいいのではないかとも思いますが,いずれにしても,今後の国や県の動向には注目していく必要があります。
     
     新型コロナが問題になり始めてから約2ヶ月,小・中・高等学校が休校に追い込まれてから1ヶ月が経ちました。大きな混乱の中,少しずつわかってきたこともあります。
     新型コロナについて,現時点での私の知見を述べさせていただきたいと思います。

     コロナウイルスは,風邪の原因となるウイルスの1つで非常にポピュラ-なものです。小・中学生はまだ最近までしょっちゅう風邪をひいていた年齢です。幼稚園・保育園児などは現在もたびたび風邪に罹っています。でもそのおかげで新型コロナにも罹りにくいし,罹っても軽く済む可能性が高いのです。
     また,成人でもほとんどの方は,新型コロナに感染したとしてもただの風邪で済むはずです。
     一方で,ギリギリの体力で生きている老人,免疫能の低下する基礎疾患のある方,喫煙者などは急速に肺炎等に進展し,重症化する可能性があるので注意が必要です。

     日本も世界の国々も,新型コロナウイルスを封じ込めようと躍起になっています。水を差すようで悪いのですが,ウイルスは世界中にばらまかれてしまいましたから,終息させるのはおそらく難しいと私は思います。
     人は初めてのウイルスには必ず感染します。新型コロナは文字通り新しいウイルスなので,これから数ヶ月~数年かけて,全人類が感染していくと思います。問題はその流行の速度です。
     爆発的に患者が増えると,病院や診療所はパニックに陥ります。一部の方は重症化しますから,ICU(集中治療室)も不足することになり,いろいろな障害が発生します。

     現状が続けば医療崩壊が起きるという懸念は,すでにいくつかの国で現実化しています。
     望まれるのは,流行がゆっくりと進んでくれることです。 
     怒られるかもしれませんが,一度感染すれば免疫が残るので,重症化さえ避けられるのであれば,全国民が早目に感染してしまった方が良いという考え方もあります。

     幸い健常人はほとんどが軽症で済みますので,症状もないのに検査が陽性なら入院などという現在の対応は見直すべきです。軽症の人はインフルエンザと同じ扱いにして,かかりつけ医療機関を受診し自宅で療養,重傷者を入院させて適切な処置を行うというふうにしないと,医療は崩壊します。
     おそらく,もうしばらくすると「あら,貴方も新型コロナに罹っちゃったの? 私も先週なっちゃったわ。お大事にね。」というふうになっているのではないかと思います。否,そうならなければおかしいです。

     2009年に新型インフルエンザが流行した時に似ています。当初は混乱しましたが,半年も経つと何事もなかったかのように落ち着きました。新型インフルエンザの毒性がそれほど強くはないことが判明したのと,迅速検査が簡単にできタミフルなどの治療薬もあったからです。
     今回は検査法と治療薬の点がインフルエンザとは違うため,世界中が混乱しています。しかし,もう暫く時間はかかりそうですが徐々に気づくはずです。そこまで恐れる必要はないのでは,と。

     あまり報道されませんが、毎年インフルエンザによる肺炎で数千人以上の老人が亡くなり、脳炎・脳症で数十人~百数十人の子供が死亡したり重い後遺症を残しているのです。
     私はコロナよりもインフルエンザの方が、特に子供たちにとっては危険なウイルスだと思っています。

     外国で多数の死者が出ているニュ-スを見て,大きな不安を感じておられる方も多いと思います。しかしそれには理由があります。
     イタリアやスペインは医療費を削減した結果,医師も薬も不足,医療体制も貧弱,それに加え楽観的で濃厚接触の習慣があり喫煙者も多いのであれだけの死者が出ています。
     アメリカは医療の水準は高いのですが,医療体制は三流です。『金のない奴は死ね』という国なのです。日本のような国民皆保険制度はなく,お金持ちは高い保険料を払って民間の保険に加入しているので良いのですが,多くの国民はお金が払えず無保険です。ちょっと熱が出たくらいで受診すると,10万円くらい平気でかかりますので,おいそれとは医療機関には行けません。今回は,家でギリギリまで我慢して様子を見ていたがいよいよ危なくなった患者が,命には代えられぬということで医療機関に殺到したものの,既に手遅れで次々に亡くなっているのが現状です。

     日本は医療制度は世界一,医療水準も世界のトップレベルです。イタリア,スペイン,アメリカと同じような状況になるはずがありません。でもその根底には,我が国の医療は医師たちの自己犠牲の上に成り立っているという事実があることは,あまり知られていません。
     重症化する可能性のある人を早期にトリアージして,死亡者数をできるだけ減少させるために,現場の医師をはじめとする医療関係者は必死に頑張っています。この辺のことを,ぜひ忘れないでいただきたいと思います。

     現在のところ,医療機関の職員に感染者が出たらその医療機関は2週間閉鎖というのが実情です。しかし,そんな対応が続けば,おそらく日本中の医療機関が閉鎖に追い込まれ,多くの患者さんが困ることになるでしょう。新型コロナ以外にも大変な病気は沢山あることを忘れてはいけません。
     近いうちに,新型コロナウイルス患者でも軽症者は,病院ではなく自宅か軽症者専用の施設で療養することになるでしょう。そして,解熱して何日経てば社会復帰してよいという指標が,一刻も早く示されるべきです。
     いずれは,インフルエンザと同じような対応で済むようになると私は考えています。

     また,経済が酷いことになっていることについても,早急な対応が求められます。このまま自粛が長引けば,飲食業・観光業を中心とした様々な業種の方々は大きな減収となります。生活が脅かされることになります。
     音楽や演劇など,芸術・文化の関係者にも大打撃です。スポーツ界も同様です。
     特にパートや非正規労働者の方々は,失業し収入が0となってしまう危険性が大きいです。
     政府の迅速かつ適正な対応が非常に重要です。ここで対応が遅れると,日本経済は悪化の一途を辿りどん底の状態に陥るでしょう。
     日本ばかりではありません。リ-マンショックの時以上の,世界恐慌の危険性をも感じます。
     そうならないように祈りたいと思います。

     子どもたちは長期の休校により,かなりストレスが溜まっています。学力・体力の低下も深刻です。親たちの負担も大きくなっています。小学校・中学校・高等学校は,感染する可能性を考慮した上で,できるだけ早く授業を再開するべきです。
     ただ、子どもが感染した場合に不利益を被る可能性のある家族がいる家庭などを考慮し,子どもを休ませるという選択肢を選べる権利を残す必要があります。

     テニスコ-トさえも閉鎖されて使えないという子どもたちからの不満の声が聞かれます。密集状態を作らない限り,屋外で感染する可能性は0に近いと言えます。
     屋外の活動の制限は,早期に撤廃するべきです。屋外活動が再開されれば,非常に不安定な状態に置かれている子どもたちの健康・精神状態を改善させる大きなきっかけになるでしょう。

     政治・行政のトップに立つ方々が,現状を認識し,正しい方向に舵を切り直してくれるよう,切に願っています。
     今こそ政治家の資質が試されるときはないと思います。
     これをお読みくださっている皆様も,ぜひ厳しい目を持って,この国の対応を見守っていただきたいと思います。

     最後までお読みいただき,ありがとうございました。